ドロドロケイドロ





このシナリオは、
5人の台本作家がリレー形式で台本を渡し合い、
2巡して完成させています。


参加作者
・唐錦
・大盛り
・しちさい
・放浪作家@らて
・シロヤギ
(順不同敬称略・リレーの順番とは関係ありません)





登場人物 比率1:2

直美(なおみ)♀:

佳苗(かなえ)♀:

警官♂:





≪本編≫


  人気のない深夜の街。
  直美と佳苗、並んで歩いている。


佳苗:ねぇ、直美。

直美:どうしたの?

佳苗:今日の宝石泥棒も楽しみだねー!

直美:しー! アンタ声が大きいわよ!?

佳苗:大丈夫!こんな深夜に誰も聞いてないよー!

直美:そういう問題じゃないでしょ!
   今から遠足行くんじゃないんだから!

佳苗:えー遠足みたいなもんじゃん!

直美:全然違うわよ!
   これはあくまで仕事なのよ!

佳苗:仕事って言っても楽勝なんだからー!

直美:まぁ……それはそうだけど……。

佳苗:それに聞かれてたとしても私達が本当に宝石盗むだなんて思わないって。

直美:確かにそうね。
   巷を騒がせる連続宝石盗難事件。
   形跡を残さない華麗な手口から、犯人が1人なのかグループなのか、
   もちろん男女どちらの犯行なのかもわかっていない。

佳苗:そうそう。
   私達みたいなか弱い女性の犯行だとは誰も思わないよー。

直美:それでも油断は大敵よ。
   どこで何があるのかわからないんだから。

佳苗:はーい。相変わらず慎重だなぁー。

直美:慎重すぎるくらいがいいの!
   それより仕事道具はちゃんと持ってきた?

佳苗:もちろん、このバッグにしっかり入れてきたよ!

直美:よし、オッケーね!
   それじゃあ、今晩もやっちゃいましょう!

佳苗:いえーい!


  警官、二人の後ろから現れる。


警官:ちょっとそこの二人ー。
   こんな夜中に何してるんですかー?

直美:ひぃっ!?

佳苗:えー!?

警官:警察の者なんだけど、ちょっとお話聞かせてもらえるー?

直美:ほら、何があるかわからないって言ったじゃん……。

佳苗:どどど、どうしよう!
   バッグに仕事道具入ってるから職質なんてされたらバレちゃう!

直美:だ、大丈夫よ!
   何とか荷物を見せないように切り抜ければ!

佳苗:そんなことできるのー!?

直美:臨機応変に対応しなさい!
   私達はプロなんだから!

佳苗:が、頑張る……!

警官:ごめんなさいねー。
   急に声掛けてびっくりさせちゃって。

直美:い、いえー!大丈夫ですよー!

佳苗:そうですー!大丈夫ですー!
   私達全然怪しくないですからー!

直美:そんなこと言う奴、絶対怪しいでしょ!
   すみません! この子ちょっと面白い子なんですー!

警官:あはは、そうですかそうですか。

佳苗:え……!?

直美:ど、どうしたの?

佳苗:超イケメン……!

直美:アンタどういう状況かわかってる!?

佳苗:あ、ごめん……。

直美:すみません! こういうマイペースな子で!

警官:あはは、ありがとうね。
   お世辞でもそう言ってもらえると嬉しいよ。
   ごめんね、本当にちょっとだけ話聞かせてね。

直美:はい! 何でも聞いてください!

警官:ご協力感謝します。
   えーっと、こんな夜遅くに二人で何してたの?

直美:こ、この子が私の家に遊びに来てて、ちょっとコンビニに行こってなって!
   ねー!?

佳苗:そ、そうです! 夜中ってお腹空いちゃいますよねー!

警官:確かにお腹空いちゃうよねー。
   二人はこの辺に住んでるの?

直美:はい、私はこの辺に住んでます!

佳苗:私はここから遠くもなく近くもなく……えっと……ほどよい距離です……!

警官:それは徒歩何分くらい?

佳苗:えーっと……何分くらいだっけ……?

直美:に、20分くらいかなー!電車で3駅ですー!
   ねー!?

佳苗:そ、そう!そうです!

警官:あ、そうなんだー。
   じゃあ結構近いね。
   二人はどういう関係?

直美:中学の同級生です!
   ずっと仲良かったんだよねー!

佳苗:高校も一緒でねー!
   クラスもずっと一緒で!

警官:何か仲良さそうだもんねー。
   歳はいくつなの?

直美:あ、20代前半です!

佳苗:私もです!

警官:いや、そりゃ同級生だから一緒でしょ!
   あはははは、やっぱり君ら面白いねぇ!

直美:あはははは!

佳苗:ありがとうございますー!

直美:……。

佳苗:……。

直美:何か……いけそうじゃない……?

佳苗:いけそう……だよね……!

警官:ん?何が?いけそう?

直美:あ、いや、こっちの話で!

佳苗:そうそう! 何でもないです!

警官:そうなの?
   ならいいんだけど。
   てか、二人共可愛いね。

直美:え!?急に何ですか!?
   まぁ……人並みにスキンケアとかはしてますけど……!

佳苗:私も本当にそれくらいかなー?

警官:それでそんなに可愛いって二人共ヤバいね。
   彼氏とかいるの?

直美:えーっと……?
   それって今関係あります……?

警官:いいから。教えてよー。

直美:いや、まぁ、いませんけど……?

佳苗:私はいません!
   募集中かなーみたいな!

警官:そっかそっか。こういうのアレなんだけどさ。

直美:はい……。

警官:連絡先交換しない?

直美:ちょっと待って!?
   これナンパされてない!?

警官:いやいや、こっちも仕事でやってるから。

直美:仕事って……!
   どこ住みかと二人の関係性と年齢聞いて、
   最終的に連絡先聞くのはナンパなんですよ!

佳苗:LINEでいいですかー?

直美:教えようとするな!

警官:明後日が非番なんだけど飲みにでも行かない?

佳苗:えー!本当ですかー!?
   是非行きたいです!

直美:アンタは何で乗り気なのよ!?

警官:パンプローナっていうスペインバルのお店知ってる?そこ行かない?

直美:あっ、知らないですー。
   あのぉナンパでしたら私達もう行ってもいいですかね……?

佳苗:あっ、私そこ知ってます!
   アヒージョが美味しいって有名な所ですよね!?
   超行きたいですー!

直美:だから、なんでアンタは反応しちゃうのよっ!?

警官:えー、本当?あそこ知ってるの?
   じゃあパンプローナにしよっか!3人で予約しとくね!

直美:あー!ちょっと待ってくだい!
   私は行くなんて一言も言ってないです!

警官:あれ?もしかしてスペイン料理苦手だった?

直美:いやスペイン料理とか、そういう話じゃなくて……。

佳苗:えー、いいじゃん直美も行こうよー!

直美:いや……今はそんな話してる場合じゃ……。

警官:なになに?他に行きたい場所とかある感じ?
   んー、じゃあイタリアンとかは? それか和食なんかどう?

直美:いえ、ですからあなたは仕事を……。

佳苗:ねぇー、パンプローナでいいじゃん。私、アヒージョ食べたいー!

直美:だから、アンタは……もう……。

警官:ねぇ、ここのお店なんかはどう?
   ほら、写真見てよ!この舟盛りとか凄くない!?

直美:あー、くそぉ……イライラしてきた……。

佳苗:わぁー、舟盛りすごぉーい!

警官:ね? 凄いでしょ!どうする?やっぱり和食にする?

直美:はぁ……うるせぇ……。

佳苗:ねぇ、直美!舟盛り凄いよ!
   やっぱり、こっちにしようよ!

警官:もしかして海鮮系苦手かな?
   だったら、お肉系はどう?ほら、こういうのとか!

佳苗:きゃぁぁああ!それ!知ってます!シュラスコってやつですよね!?
   肉バル!超行きたいです!ねぇ!直美もこっちがいいよね!?

警官:あっ!ここはどうかな? 
   ここのお店とか内装綺麗だし、かなりオススメだよ?
   (あと、こっちのお店は希少部位のお肉なんかも取り扱っててね! 
   ビールの種類も沢山あってもう最高なんだよ!)


  佳苗は被せて読む。


佳苗:ねぇ!直美!肉にしようよ!肉にく!にく!にくにくにく!!

直美:あー!もうっ!うるさぁぁああああいっ!

佳苗:直美……?

警官:どっ……どうしたの急に?

直美:さっきからなんなのよ、あんた達は!
   アヒージョだのシュラスコだの!
   そんなオシャレなもの食べる計画立てる前にやる事やりなさいよ!

佳苗:直美ごめんって……ちょっと一旦落ち着こ?ねっ?

直美:なんでアンタに落ち着こうとか言われなくちゃいけないのよ!?
   さっきまで、きゃー!シュラスコ食べたいーい!
   とか、大はしゃぎしてた癖に急に人を宥(なだ)めてんじゃないわよ!
   このっ、尻軽おてんば娘っ!

佳苗:ひいいぃぃぃ!ごめんさい!

警官:まあまあ、なにもそんなに怒らなくても…….

直美:アンタは仕事しなさいよ!なんで警察官がこんな所で油売ってんのよ!?
   パトロール中にナンパって、市民に申し訳なくないの!?
   行先と住所と年齢聞いたら、次は所持品検査でしょうが!?ちゃんとやりなさいよ!
   このっ、イケメングルメポリス!

佳苗:あれ?なんか最後だけ褒めてない?

警官:ごっ、ごめんね……。
   あっ、うん……そうだよね……。
   仕事しなくちゃ……だよね……。
   んじゃあ、ちょっと所持品検査したいからそのバックの中見せて貰ってもいいかな?

直美:ったく!やっと、仕事する気になったのね!
   ほら、佳苗バック渡して!

佳苗:え?でも、このバックの中身……。

直美:いいから渡しなさいよっ!

佳苗:あっ、はい!どうぞ!

警官:うん、ありがとう
   じゃあ、見させてもらうね
   ええっとぉ……。

佳苗:ねぇ、直美……。

直美:何よ?

佳苗:本当に渡して良かったの……?

直美:良いも何も、あれが本来の警察官の姿でしょ?

佳苗:いや、でも……バックの中身……。

直美:バックの中身……?
   ……ん?
   ……あれ?
    ……あっ!?
   しまったぁあああああ!!

佳苗:しまった、じゃないよー!
   ここからどうするの!?


  警官が荷物を漁っている間、二人にスポットライトがあたり、二人はヒソヒソと話す。


直美:私、つい熱くなっちゃって……。

佳苗:ったく……まぁ、イケメンに舞い上がった私も私だけど……。

直美:どうしよう佳苗、バッグの中身見られたらあたしたち終わりよ!

佳苗:そうはいっても……うーん……。

直美:(顔を覆って)はぁー、ここまで順調にやってきたのに……。

佳苗:……。

直美:この状態でバッグを取り返すのも不自然だし、
   逃げるって言ってもバッチリ顔見られちゃってるし……。

佳苗:……アドリブだ。

直美:え?

佳苗:アドリブで行こう、直美。

直美:アドリブ……?

佳苗:そう、アドリブ。なにか聞かれても、とにかくそれっぽい話でっちあげるのよ。

直美:でも……。

佳苗:大丈夫、私の職業なんだっけ?

直美:……泥棒?

佳苗:バカ、表のほうよ。

直美:えっと、漫画家。

佳苗:そう、漫画家。
   つまり私は、作り話のプロフェッショナルってこと。
   あいつが何を聞いてきたって、それっぽい話を作ってどうにだってごまかせるって訳。

直美:ほんと……?

佳苗:漫画家なめんなよ。売れなくたって、何百って数のお話を書いてきたんだ。
   それに比べたら、盗み道具の一つやふたつ、簡単にごまかして見せますよ!

直美:か、かっこいー!

佳苗:とりあえずバッグの中身、何が入ってる?

直美:え?

佳苗:中身がわかんなきゃストーリーも作れないでしょ。中身覚えてるだけ教えて。

直美:え、えっとえっと……まず……。
   バール。

佳苗:窓をこじ開ける時に使うやつね、あとは?

直美:あと、電動ドリル。

佳苗:ネジを回す時の拳銃みたいなあれね……。

直美:ヘアピンも入ってた。

佳苗:ヘアピン、結構な鍵があれで開くのよね。

直美:あと、えーっと……。

佳苗:ほら早く、まだあるでしょ。

直美:そんな急かさないでよ……うーん……。


  スポットライトが解ける。
  と、警官が訝しげな表情で直美と佳苗を見る。


警官:君たち。

佳苗:はっ、はい!

警官:ちょっといいかな。

佳苗:はい、どうしたんですか?

警官:いや、少し気になるものがあって。

佳苗:え? なんですかぁ〜?

警官:これ、君たちのバッグだよね?

佳苗:はい、そうですけど。

警官:うーん、そっか……。

佳苗:どうかしたんですか?

警官:いやね、ちょっと順番に聞いていきたいんだけどさ。

佳苗:え〜?

警官:(バッグの中身から取り出して)これ……。

佳苗:あー、それ、はい……。

警官:これ、釘抜きだよね。

警官:女の子二人だけで、ましてやこんな夜中に、使わないよね? こんなもの。

佳苗:使います。

警官:何に使うの?

佳苗:それは、えっと……。

警官:あとさ、これも、ほら、電動ドリル?
   使わないよね、電動ドリル。
   他にも、ドライバー、手袋、ガムテープ、
   あとこれ……最初はニット帽かと思ったけど……。
   もしかして、君たち……ど――

佳苗:どんぐり集め。

警官:え?

佳苗:ん?

警官:ん?

佳苗:どんぐり集め

警官:どんぐり集め?

佳苗:どんぐり集め

直美:どんぐり集め……。


  短い間。


警官:え? なにが?

佳苗:何がってなんですか、どんぐり集めですよ

警官:どんぐり集め?

佳苗:ええ、そうです、やりませんでした?小さい頃。
   どんぐりを拾うんですよ、どんぐりの木の下で。

警官:え、うん、どんぐり集めはわかるんだけどさ。

佳苗:それです。

警官:うん。
   ……うん?

佳苗:なんですか。

警官:どんぐりを集めてたってこと?

佳苗:これから集めに行くんですよ。

警官:こんな時間に?

佳苗:あーおまわりさん知らないんですか。
   むしろこの時間がベストなんですよ、どんぐり集めは。

警官:聞いたことないけど。

佳苗:ほら、朝(あさ)マズメですよ、釣りとかも早朝がよく釣れるじゃないですか。
   どんぐりも朝がいいんですよ、朝のほうが活発なんで。

警官:じゃあこの、バールは?

佳苗:朽木(くちき)をどかす時に使うんです、朽木の影のどんぐりを拾うために。

警官:電動ドリル。

佳苗:穴を開けるんですよ、地面に。
   あんまり乱獲するとその土地にどんぐりが生えなくなっちゃうので、
   次なるどんぐりのためにどんぐりを埋めるんです。

警官:ドライバー。

佳苗:高いところにあるどんぐりを取りに行くときに、
   崖にそれを突き刺して登っていくんです。

警官:手袋。

佳苗:トゲトゲのどんぐりを拾う時に。

警官:ガムテープ。

佳苗:虫食い穴を塞ぐため。

警官:じゃあこの、目出し帽は……。

佳苗:それは、どんぐりの気持ちになるために、装着するんです。

警官:どんぐりの気持ち……?

佳苗:お見せしましょうか?

警官:えっ

佳苗:貸してください。

警官:あ、ああ……。

佳苗:(目出し帽を被って)よいしょ…………。
   ニャ―。

直美:(小声で)ちょっと佳苗……!

佳苗:なによ。

直美:なによはこっちのセリフでしょ! なによどんぐり集めって!

佳苗:読んで字のごとくよ。どんぐりを集めるの。

直美:だからそれはわかってるけど、そんなんでごまかせるわけないじゃない!

佳苗:大丈夫、見てなって。

直美:全然だいじょばないわよ! あんたを信じた私が馬鹿だった

佳苗:いいからいいから。

警官:ちょっと、なにをコソコソ話しているんだ。

佳苗:すみません。

警官:つまり、君たちは、どんぐりを拾いに行く途中だったんだ?

佳苗:そうです。

警官:これらの器具を使って。

佳苗:はい。

警官:ふむ……。

佳苗:納得していただけましたか?

警官:それなら一つ聞きたいんだけど。

佳苗:はい。

警官:集めたどんぐりは、何に使うつもりなの?

佳苗:え……それは……。

警官:集めるからには、それ相応の理由があるんでしょ?

警官:しかもこんな早朝から集めるなんて、なにか特別な……。

佳苗:売るんです。

警官:ん?

佳苗:売るんです、リスに。

警官:え?

佳苗:リスに売るんです。

警官:……リスに?

佳苗:はい、リスに売るんです、どんぐり。

直美:(小声)ちょっと佳苗……!

佳苗:(小声)大丈夫だって……!

直美:(小声)何が!


  間。


警官:あーー!
   なるほどー!どんぐりだから!リスに!

直美:え……?

警官:このね、帽子を被ってどんぐりの気持ちになりながら、埋めながらね、
   採りながらこう、ニャ―って言いながらね!

佳苗:(小声)ね?言ったでしょ?

直美:(小声)もしかしてこいつ……。

佳苗:(小声)ええ、間違いないわ。
   馬鹿よ。

警官:そっかそっかぁ、どんぐりをリスに売る人たちだったのかぁ、だったら納得だぁ。

佳苗:でしょ〜?

警官:大変だねぇ若いのに、こんな朝早くから。

佳苗:いやいやそんな〜。

警官:つまり、このバールもドライバーも、
   手袋もガムテープもね、どんぐりを採るためだったのか〜!

佳苗:そうなんですよ〜。

警官:そっかそっかー。

佳苗:ええー困っちゃいますよねーほんと。

警官:あっはっはっは。

佳苗:ふふふふふ。

警官:じゃあこのヤギの血は何に使うの?


  少しの間。


佳苗:え?

直美:え?

警官:え?

佳苗:え?

直美:え?じゃないわよ!ちょ、佳苗あれ何!?私が用意した物じゃないわよ!

佳苗:いや、あれはまさか……。

直美:私が道具を用意して、あなたが最終チェックでバックに詰める。
   そういう段取りだったわよね!
   ……私に中身聞く前にあなたが覚えてなさいよそもそもぉ!

警官:で、このヤギの血は何に? 
   どこで売ってるのこんな綺麗にヤギの血って書かれてるラベルのヤギの血。

直美:ヤギの血ヤギの血うっるさ!

佳苗:間違いない、あれは私が毎朝飲んでる美容用のヤギの血だ。

直美:ええ!? あなたスムージーみたいなノリで吸血してるの!?
   なんでそんな物が!?

佳苗:ちゃんとチェックしながら詰めたのに……凄い眠かったけど。

直美:じゃあちゃんとチェック出来てないじゃない! そりゃ中身覚えてないわよね!

警官:あの、これは何に使うのかな?

佳苗:あ、それはこの子のなんで知りません。

直美:えええええええええええええ!? なに急に責任転嫁してるの!?

佳苗:だって、女の子が毎朝ヤギチー飲んでるって、恥ずかしいじゃん。

直美:さっきキメ顔で……アドリブだ。って言ってた奴が何言ってんのよ! 
   あとヤギチーって言うのヤギの血!?

佳苗:臨機応変に対応しなさい!私たちはプロなんだから!

直美:ひっぱたくわよ!?

警官:あ、君のなんだ。何に使うの?

直美:え、えぇ……っと……じ、実は私達、漫画家なんですよー。

警官:へえ、そうなの。

直美:カラー原稿をヤギの血で描くと色乗りがいいんですよねー!

警官:あ、そういう事。
   リスにどんぐりを売るだけじゃなくて漫画家もやってるんだ。大変だね。

直美:ええ本当に!

佳苗:よく誤魔化せたね。偉い。

直美:絶対後でボコすから。

警官:僕の友達にもイラストレーターがいてさ。

直美:へえー。

警官:そいつも面白くて良い奴なんだ。

直美:そうなんですかー。

警官:そいつとあともう一人面白い友達もいてさ。

直美:はいー。

警官:君たちも友達あと一人誘って一緒にご飯行こうよ。

直美:あこれまたナンパして来てるこの税金泥棒!

佳苗:え、ちょヤバっ、誰誘う?

直美:盛り上がらないで。

警官:パンプローナっていうスペインバルのお店知ってる?そこ行かない?

佳苗:あっ、私そこ知ってます! アヒージョが美味しいって有名な所ですよね!?
   超行きたいですー!

直美:タイムリープしてるもしかして!?
   ちょ、あなた職質したいんですか!?
   ナンパしたいんですか!?どっちですか!?

警官:どっちを答えて欲しい?

直美:真実だよ。佳苗、もう行こ。

佳苗:え、もう?

直美:このままこんな無駄な時間過ごしてたら仕事出来ないでしょ。

佳苗:あ、ごめん。パッと忘れしてた。

直美:ど忘れね。その言葉をど忘れしないで。じゃ、私たちはこれで失礼します。

警官:え、いやまだ聞きたい事が……。

直美:これ任意ですよね?じゃあ私たちには拒否権ありますよね?

警官:いやこれだけ聞かせてよ。

直美:答えられません。

警官:リスに売るどんぐりってグラムいくら?

直美:答えられません!

警官:なんで?

直美:なんででもです!

警官:いいじゃん、教えてよ、それくらい。どこにどうやって売るの?

直美:だめですって。

警官:オークション? それとも裏のカルテルかな。

直美:は?

警官:もしくは、依頼主がいて、君たちは知らされてない……とか。

直美:何言ってんの、あんた。

警官:いや、別に。ただ聞いてるだけだよ、どんぐりの行先をね。
   ……リスはいろんなところにいるから。

佳苗:直美……。

直美:うん。
   ……気を付けて佳苗。こいつ、ただの警官じゃない。

警官:どうしたの?用事があるんじゃなかった?
   それとも、お話を続ける?

佳苗:あなた、何者?

警官:何者って、見て分からない?おまわりさんだよ。

直美:はっ、白々しい。

佳苗:ねえ、もしかして、知ってるの?
   私たちの……仕事。

警官:んー。ふふふっ。

直美:なに?何が可笑しいの。

警官:ああ、ごめんごめん。
   やっと気付いたのかって、思ってね。
   心配しなくていいよ。僕も一緒なんだ。君たちと。

佳苗:一緒?

警官:雇われてるんだよ。
   たぶん、君たちと同じクライアントにね。

直美:なにそれ。

警官:用心深いリスもいるってことだよ。

佳苗:じゃあ……あなたも泥棒を?

警官:おっ、佳苗ちゃんは物分かりが良いね。飴いる?

佳苗:え?えへへ、いる。

直美:佳苗、調子付かないで。
   ――まあでも、私達の正体を知ってるってことは、
   きっとあんたの言ってることは本当なんでしょうね。
   ……で? こうやって接触してきた意味は?

警官:協力しよう。

直美:はあ?

佳苗:協力?

警官:うん。

直美:嫌よ。私たちにメリットがない。

警官:あるよ。

直美:ないって。

警官:あるんだよ。

直美:なにが?

警官:君たち、今回のターゲットはC区の宝石店だろ?
   僕はあそこの元従業員なんだ。

直美:嘘。

警官:ほんとだよ。まあ、正確には従業員のフリをしてたんだけどね。半年くらい。
   どう? メリットありそう?

佳苗:ありそう。

直美:ありそうね……。

警官:それはよかった。
   それじゃあ、付いていってもいい?

佳苗:直美、どうする?

直美:うーん……。
   クライアントが同じなら、報酬が競り合うこともないでしょうし。
   どの道ターゲットが同じなら協力するのも悪くないかも……。

警官:おっ、じゃあ決まりだね。
   短い間だけどよろしく。

佳苗:あ、はい。こちらこそー。

直美:足はひっぱらないでよ。

警官:はいはーい。


  間。


直美:……着いたわね。

佳苗:うん。

直美:ぱっと見は何の変哲もない宝石店だけど。
   二重依頼するってことは、それなりにきついセキュリティが敷かれてるんでしょうね。

警官:そうだね。

直美:具体的には?

警官:うん。

直美:うんじゃなくて。具体的には?

警官:え?

直美:ん?え?

警官:え?

佳苗:え?

直美:いやだから具体的には?

警官:え?

直美:えじゃねーよお前に聞いてんだよ。

警官:え?なんで?

直美:なんでじゃなくて。従業員だったんでしょ?ここの。

警官:そうだよ。

直美:うん。だから、セキュリティのタイプは?

警官:え?

直美:え?

警官:セキュ……?

直美:え?ん?あれ?嘘、待って待って待って。
   従業員だったんだよね? ここの。

警官:うん。

直美:ほんとに?

警官:ほんとほんと。

直美:ああ、そう。うん、そうか。
   ――なんの仕事してたの?

警官:なんの仕事って……普通に、販売員だけど。

直美:ん……販売員って……。

佳苗:宝石を売ってたってこと?

警官:ああ、宝石、売ってたね。

直美:普通に、店内で働いてたってことよね?

警官:ああ、そうだよ。

直美:だとしたら、わかるはずよね。

警官:なにが?

直美:セキュリティのタイプ。

警官:タイプって?

直美:あんたも同業ならそれくらいわかりなさいよ!

警官:そんなこと言われても……。

佳苗:だから、動体検知とか、熱感知とか、レーザーに引っかかったら警報機がーとか!

警官:ああ、そういう。

直美:で?中はどうなってるの?

警官:そうだな……正直僕もあんまり詳しくは知らないんだけど……。

直美:はぁ?あんたさっき自信満々に「メリットありそう?」とか言ってたくせに!!

警官:ま、まぁ待てって。

直美:なによ。

警官:情報が完全にないわけじゃない、じゃなきゃ君らを誘ったりしないって。

直美:だからそれを教えなさいよって。

警官:ま、まぁそう焦るなって順番に、順番に教えるから。

直美:ったく……。


  間。


警官:まず、店の入り口は2つある。

佳苗:表口と、従業員用の裏口でしょ。
   それくらいこっちだって調べてるわよ。

警察:ああ、そうだ。

警官:そして、これから狙うのは、表口からの侵入。

佳苗:へ?あなた何言ってるの、裏口からのほうが安全に決まってるじゃない。

警官:ふふ、普通ならそう考えるよね。

佳苗:え、ええ……。

警官:だけど、裏口はだめだ。

佳苗:どうしてよ。

警官:裏口は特に警備が強固なんだよ。
   人感センサーに振動感知システム、監視カメラだって死角なく取り付けられてる。

佳苗:そ、そうだったの……。

直美:そうそう!そういうのよ!そういう情報が欲しかったのよ!
   勿体ぶらずに早くそういうの出しなさいよ!

警官:ああいや、順番に説明しないと厄介だから……。

直美:つまり、裏をかいてるわけよね。私たちみたいな人間が入るのは大抵裏口。
   だから、あえて裏口のセキュリティを強化することによって宝石を守ってるんだ。

警官:あ、ああ、まぁ、そんな感じ。

直美:なるほどね……そうと決まれば善は急げよ。

佳苗:私達、純度100%の悪だけどね。

直美:うるさいわね、早く、道具。

佳苗:はいはい。

警官:ちょっとまった。

佳苗:ん?

直美:どうしたのよ。

警官:話は最後まで聞いて貰わないと。

直美:話って、裏口は危険だから表口からってさっき。

佳苗:だから、表口から静かに入って、宝石を詰めるだけ詰めて、とっとと……。

警官:宝石はないんだ。

佳苗:へ?

直美:今、なんて?

警官:宝石はない、表口からフロアに入っても、店の中にも、
   バックヤードにも、宝石はないんだ。

直美:そんな、だってここは宝飾店で、店内の展示も、裏の在庫だって。

警官:閉店後に全部片付けてる、店内にも裏にも宝石はない。

直美:そんな……。

佳苗:ちょっとまってよ、じゃあ目の前の、この建物は今、もぬけの殻ってこと?

警官:ここの店長、少し……いや、かなり慎重なんだ。

警官:だから店内には何もない、宝石は閉店後に全部金庫に仕舞うんだよ。

佳苗:金庫?

警官:ああ、番号認証、ダイヤル認証、最後にマスターキーが必要な、厳重な金庫にね。

佳苗:そんな……それじゃあ、表口から入っても意味がないじゃない……。

警官:いや、本題はここからなんだ。

佳苗:へ?

警官:番号、ダイヤルは僕が調査済み、簡単に開くようになってる。
   そして、これ。

佳苗:それって……。

直美:まさか、マスターキー……?

警官:正確には、その写し。
   つまり、金庫の場所までいけば、すぐに金庫は開けられる。

直美:あなた……ものすごいわね。

警官:ああ、ものすごいだろ。

佳苗:ええ、ものすごいわ。

警官:と、ここまで話して、君たちを誘った理由が明確になってきたんじゃないかな?

佳苗:ん……確かに、最適な入り方を知っていて、暗証番号もダイヤル番号も、
   その上マスターキーまで持ってる
   なんだか……あなた一人で大丈夫そうな気もするけど……。

警官:そうだね、それだけ言ったら、僕一人で簡単に盗み出せそうだ。

直美:……どういうこと?

警官:まぁ、焦らす意味もないから、単刀直入に。

警官:君たちには、僕をその金庫まで護衛して欲しいんだ。

直美:護衛……?

警官:ああ、僕が金庫にたどり着けるように、君たちに協力して欲しい。

佳苗:でも、あなたは金庫の場所を知ってるのよね?

警官:ああ、知ってる。

佳苗:中の構造も知ってるから、金庫までの道のりもわかってる。

警官:そうだね。

佳苗:その上で、私達の協力が必要って?

直美:どういうことなの。

警官:そうだな、色々理由はあるんだけど、大前提として、知っておいてほしいことがある。

直美:……なによ。

警官:この店は、普通じゃない。

直美:普通じゃない……どういうこと?

佳苗:それって、どういう……。

警官:この店は政府が秘密裏に運営している店ってことだよ。

佳苗:え!?

直美:そんな!? 私達が調べた時にはそんなこと……。

警官:わかる訳ないさ。政府が総力を挙げて隠しているんだから。

佳苗:政府のお店……。あ……だからリスが何人もどんぐり集めを雇ってるんだ。

警官:そういうこと。

直美:それで……それが本当だとして何で護衛が必要なの?

警官:ああ、警備員がいる。それも武装した警備員が……ね。

佳苗:……。

直美:政府の店なら有り得なくはない話ね……。

佳苗:でも政府のお店……しかも武装した警備員がいるってことは……。

警官:そう。金庫の中にあるのは展示品や在庫だけじゃない。

直美:特別な……?

佳苗:どんぐりがある……?

警官:そういうこと。

直美:……今までで一番大きな仕事になりそうね……。

佳苗:ふふっ……漫画のネタになるかもしれない……。

警官:三人で協力すればきっと盗める。僕に策がある。

直美:聞こうじゃない。

警官:まず三人で表口から侵入する。と、同時に店内の監視カメラを潰す。

佳苗:それはどうやって?

警官:もちろん、銃でだ。

直美:銃……。

佳苗:銃……。

警官:店内はそこまで広くないがこの店舗には地下が存在する。
   しかも複雑に入り組んだ地下通路だ。

直美:複雑に入り組んだ地下通路……。

佳苗:複雑に入り組んだ地下通路……。

警官:もちろん、金庫までのルートは僕の頭の中に。
   しかし途中にトラップの仕掛けられたゲートがいくつか存在する。

直美:トラップの仕掛けられたゲート……。

佳苗:トラップの仕掛けられたゲート……。

警官:そこで僕がゲートを開けるまでの間、護衛をしてほしい。
   ゲートの近くには自動迎撃システムがあるから気を付けて。

直美:自動迎撃システム……。

佳苗:自動迎撃システム……。

直美:ちょっと……あまりにもヤバそう過ぎるんだけど……え? 冗談?

警官:冗談言ってどうするんだよ。

佳苗:そもそも護衛って言っても私達どう戦えば……。

警官:いや、もちろん、君たちの銃で……。

直美:君たちの……?

佳苗:銃……?

警官:……。

直美:……。

佳苗:……。

警官:え……?もしかして持ってない……?

直美:え……?逆に……も、持ってるの……?

警官:当たり前だろ。どんぐり集めなんだから。

佳苗:持ってるの!? それって犯罪なんじゃ!?

警官:何言ってるんだ、泥棒も犯罪だろ。

佳苗:いや、そういうことじゃなくて!

警官:え?今までどうやってどんぐり集めてたの?

直美:どうって……裏口をピッキングして、店内に入って……。

佳苗:ショーケースを割って、鞄に詰めて帰る……みたいな……。

警官:それだけ?

直美:そう……それだけ……。

警官:……。え?赤外線くぐり抜けたことは?

佳苗:ない……。

警官:天井が迫ってきたことは?

直美:ない……。

警官:床が開いて底に棘がある落とし穴に落ちたことは?

佳苗:ない……。

警官:サイボーグの大群に追われたことは!?

直美:コイツ、漫画とかアニメで見るタイプの泥棒だ!!!

佳苗:そんな人、本当に存在するの!?

直美:よくよく考えたら政府の宝飾店で働いてて、今警察にいるって有り得ないもん!

佳苗:え? もしかして宝飾店も警察もどんぐりの為だけに潜入を……?

警官:そうだよ。この宝飾店には金庫にある「ジュピターの瞳」の為に潜入した。

直美:名前がもう漫画とかに出てくるヤツだもんね……。

警官:警察には「賢者の石」の情報を手に入れる為にね……。

佳苗:賢者の石……絶対ヤバいヤツだ……。漫画とかによく出てくるヤツだもん……。

警官:君たちは……どうやらただのコソ泥らしい……。

直美:悪かったわね!コソ泥で!

警官:ああ、悪いよ。今回は可愛い女の子と一緒に仕事できると思ったのにな……。
   結局、いつもみたいに一人仕事だ。

直美:残念でした!じゃあ帰るわよ、佳苗!

警官:え?どこ行くの?

佳苗:どこって……帰ります。だって私達じゃ絶対無理だもん。

直美:コソ泥ですからねー。

警官:やれやれ……。あのね、君たちはもうどこにも行けないよ……。

佳苗:え?

直美:どういうこと?

警官:何で僕が「ジュピターの瞳」や「賢者の石」の情報を言ったと思う?

直美:何で……言ったの……?

警官:君たちを帰すつもりがないから……だ。

佳苗:え……?帰すつもりがないって……?

警官:この店が政府の店という事実、金庫に全ての宝石があること、
   それにセキュリティについて……。
   全て君たちみたいなコソ泥が知っていいことじゃないんだ。

直美:いや、それはアンタが勝手に言っただけじゃない……。

警官:ああ、そうだよ。
   その情報を教えて、使えるのなら使って、使えなければ消せばいいからね。

佳苗:ひっ……!

警官:恨むなら君らを雇ったリスを恨みなよ。

直美:ナ、ナイフ?

警官:コードネーム、キリキリマイ。
   聞いたことくらいあるだろ?

直美:ダッサなにそれ。聞いたことないわよそんなの。

佳苗:ちょっと直美、あんまり刺激しないほうが。

警官:さっき銃の話をしたけどね、
   実は僕、こっちのほうが得意なんだよ。ペロォ

佳苗:うわあナイフなめてる……。
   本当にいるんだ、ナイフ舐める人。

警官:ふふふ、そう。僕はナイフを舐めるタイプの人間なのさ。
   どうだい、怖いだろう? ペロペロ

佳苗:うわあ。

警官:ああ、マリーナ。今日も綺麗だよ……。

佳苗:ナイフに話しかけてる……。

直美:それで?私たちをどうするつもり?

警官:だから言ったじゃないか。僕に協力するか、ここで消えるか。
   選択肢はそれだけ。コソ泥でも手を貸すってなら悪いようにはしないよ。ペロペロ

佳苗:消えるって……どういう意味?

警官:気絶させて、手足を拘束して、海外の金持ちの変態に売る。

佳苗:ええ、なにそれ、こわ。

警官:怖いだろう。だから手を貸すのが身のためだよ。ペロリ

直美:手を貸すって言ったって、さっきの話を聞く限り、私たちに務まりそうにないわ。

警官:そんな事ないよ。弾避けくらいにはなるだろ。

直美:言うわね。

佳苗:まあその通りだけど……。
   ちょっと直美、どうする?
   絶対やばいって。

直美:うーん。
   ……よし、分かったわ。あんたに協力する。

佳苗:えっ。

警官:おっ、賢明な判断だね。

佳苗:ちょちょちょ、いいの直美!?そんな簡単に……!

直美:まあ落ち着いて。どうせこのままじゃ逃げられないでしょ。
   だったらとりあえず協力するふりして、寝首を掻いてやる。
   それに、ついでにお宝も横取り出来たら尚良しだわ。

佳苗:ええぇ、嘘。
   天才じゃん……。

直美:でしょー?

警官:何を話してるんだい?

直美:こっちの話。気にしないで。

警官:ふーん……。

佳苗:あはは。

警官:まあいいけど。さっそく仕事に入りたいんだけど、準備はいいのかな。

直美:ええ。

佳苗:バッチリです。

警官:それじゃあ、まずは裏口に回ろう。

直美:裏口? 表口からじゃないの?

警官:君たちが銃を持ってないならさっきの作戦は使えない。
   監視カメラに見つかってお終いだ。

佳苗:そういえば言ってたねそんなこと。

警官:だから、僕がもともと使うつもりだったルートから潜入する。

直美:使うつもりだったって……。裏口は危ないんでしょ?
   本当に私たち役に立つの?

佳苗:不安だよぉ……。

警官:いいから、とりあえず、付いてきて。


  間。


佳苗:ここが裏口?

警官:ああ、そうだ。普段は従業員と、限られた人間しか出入りしない。

直美:ずいぶん簡素なつくりね。ドアノブしかついてないじゃない。

警官:そんなもんだよ。
   たぶんカギもかかってない。

直美:え、なにそれ、なんで?

警官:まあ見てみれば分かる。

直美:見るって、何を?

警官:そうだね。
   いいかい? 僕がゆっくりトビラを開けるから、片目だけで中を覗くんだ。
   えーっと、じゃあ、佳苗ちゃん。

佳苗:え、私?

警官:うん。覗くだけだから。

佳苗:わ、わかった。

警官:ゆっくりとだよ。

佳苗:う、うん。

警官:よし……。
   それじゃあ、開けるよ……。
   ――どう?

佳苗:ん……ん?
   よく見えない。

警官:そう? それじゃあもう少し開けてみるから。
   ――どう?

佳苗:え……え?
   なにあれ。

警官:見えたみたいだね。

佳苗:RPGゲームとかでよく見る、動くタイプの石像によく似た石像がある……。

直美:なにここコラボカフェ?

警官:見くびらない方がいい、
   あれがさっき説明した人感センサーと振動感知システム、
   監視カメラを全て担う自動迎撃システム兼警備員さ。

直美:ワンオペ!?何その社員並みに働かされてるシフトリーダーみたいなやつ!

警官:しっ!やつが起きる!

直美:しかも寝てんの!?そりゃ寝るだろうね!いま夜勤中だもんね!

佳苗:ここはどうやって突破するの?

警官:そりゃもちろん、泥棒の基本中の基本。しの……

佳苗:篠笛ね。

直美:なんでよ、あなたの中の泥棒イメージパンク過ぎるわよ。

佳苗:石川五右衛門も持ってるじゃない。なんか長いの。

直美:あれキセルよド直球バカ。

警官:正解は忍足だ。音を立てずにゆっくりとね。

直美:でも、流石に振動感知システムが……。

警官:なるべく部屋の隅の床板の境目を歩くんだ。

直美:ウグイス張りなのこの店!?そういう振動と音!?

佳苗:よし、1番佳苗改め、メルヴェイユ行くわ。

直美:いいのよ漫画やアニメに出てくるタイプの泥棒ぶらなくて。
   あとそれフランスのチョコケーキよ。

警官:さあ僕らも行こうか。
   この仕事が終わったら、甘いケーキでも食べに行こう。景気よくね。

直美:初っ端からフラグ立てると共に士気下げないで。

佳苗:……静かに……静かに……。

警官:へえ、二人共良い動きだね。
   人感センサーと振動感知システム、監視カメラを全て担う自動迎撃システム兼警備員、
   全く気がついてないよ。

直美:長い長い長い。それ一々言わないといけない?
   これでも巷を騒がせる大泥棒よ。これくらい出来て当然。

警官:このまま奥の扉に入るんだ。
   静かに、ここからはもっと慎重に、大きな音なんて以ての外だからね。

直美:佳苗、開けて。

佳苗:うん。痛ぁぁっ!?

警官:え?

直美:え?

佳苗:ごめん、静電気来た。

直美:ド直球バカああああああ!

警官:マズイ!
   人感センサーと振動感知システム、
   監視カメラを全て担う自動迎撃システム兼警備員が目を覚ました!

直美:それ一々言わないといけない!?

佳苗:い、一応扉は開いたよ!

警官:急いで中に入るんだ!走れ!

直美:ど、どうするのよこの後!

警官:このまま最短ルートで目的地を目指す。
   休んでる暇はないよ? こっちだ!

佳苗:直美早く!切り替えてこ!

直美:蹴り殺すわよ!?

佳苗:うわあ本当に階段降りてってる!マジで地下迷路じゃん!

直美:これ本当に色んなトラップがあったりするのかな

警官:この部屋に入るんだ!

直美:なによ、行き止まりじゃないこの部屋!

佳苗:ええ! どうするの!?

警官:言ったろ、最短ルートさ。この壁のこの位置に……あった!隠し扉!

佳苗:早く開けて!

警官:ダメだ電子ロックがかかってる。

直美:じゃあダメじゃない!

警官:落ち着きなよ、今からシステムをハッキングして開けてみせる。

佳苗:そんな事出来るの!

警官:コードネーム、テンテコマイの実力を見せてあげるよ。

直美:キリキリマイじゃなかった!?

警官:ハッキングの間、僕は無防備になる。二人共、護衛を頼んだよ!

直美:こ、ここで!?

佳苗:私たち武器なんて持ってないのに!

直美:せめてあなたの武器貸してよ!

警官:………………!

直美:コイツ集中決め込んでガン無視してんだけど!

佳苗:直美!

直美:何どうしたの!

佳苗:ロボット出てきた!

直美:何馬鹿な事言っ、本当にロボット出てきた!

佳苗:や、ヤバいって!
   めちゃくちゃ殺意高い感じのロボットだよ! ブルルルンって唸ってるもん!

直美:な、なんでロボットが唸って……!

佳苗:なんか胸の所開いたよ。何あれ。……キュインキュイン言ってる!

直美:絶対ビーム的な奴じゃない!ちょっと!隠し扉はまだ開かないの!?

警官:………………!

直美:せめてこれには返事しろよ!

佳苗:どどどどうしよう!私たち死ぬの!?

直美:な、何か今持ってる物でなんとか出来ない!?

佳苗:コソ泥の道具でなんとか出来るわけないじゃん!
   うわーん! 最後に聴くのがあんな唸り声なんてヤダ! 
   イケメンに息多めイケボで囁かれて死にたい!

直美:そんなキモイ願望持ってたの!?
   吐息イケボは地雷が多い……はっ! 佳苗! ガムテープ貸して!

佳苗:え、はい。

直美:一か八かよ!

佳苗:直美どこ行くの!?一人にしないで!やだ!死にたくない!
   マイクに乗せたらボフボフなるくらいの息多めイケボに囁かれて死にたい!
   キュインキュインやめて!いや!やだあああああああああ! 
   …………キュインキュイン……止まった……?あれ?

直美:なんとかなったわね

佳苗:直美!い、一体何をしたの!?

直美:このロボ、ブルルルンって唸ってたでしょ?

佳苗:うん。

直美:背中の方回ってみたら、エンジン積んでたのわかったの。
   だから排気口をテープでギチギチに塞いでやったわ。

佳苗:それでロボット壊したの!?直美凄い!よく思いついたねそんなの!

直美:佳苗のおかげよ。

佳苗:え?

直美:佳苗が息多めイケボって言ってくれたから思いついたの。

佳苗:そんな事に思いつかないでよ!どういう意味なの!

警官:隠し扉が開いたよ!どうしたんだい?

直美:うるさい呼吸器官テープで塞ぐぞ。

佳苗:早く隠し扉に入ろ!

警官:さあこの廊下を行けば……な、これは!?

佳苗:わ、なにこれ!?ガス!?

直美:も、もしかして、毒ガス!?

警官:二人共気をつけるんだ!このガスを吸うと、気分が悪くなるぞ!

直美:だけ!?じゃあ我慢するけど!?

警官:気分が悪いまま宝石と出会うのは美しくないだろ!?

直美:我慢するけど!?

佳苗:うっ……!

警官:ほら、君の相棒も気分が悪くなってる!

佳苗:げほぉ!

直美:……え

佳苗:……がはっ……おぇ……!

直美:か、佳苗!?
   そんな、あなた……な、なんで血なんか吐いてるのよ!
   このガス、本当は毒ガスなんじゃないの!?

警官:そんなはずはない!確かに有害ではあるが吐血なんかするはずない!

直美:佳苗しっかりして!

佳苗:直美……ごほっ……私は、大丈夫……。

直美:大丈夫なわけないでしょ!血なんか吐いて!

佳苗:ヤギチー飲んだら……むせちゃった……。

直美:ヤギチーかいっ!何でこのタイミングでヤギチー飲んでるのよ!?
   ヤギチー飲むタイミングイカレてんのか!どう考えても今じゃないでしょ!ヤギチー!

佳苗:ヤギチー連呼し過ぎじゃない……?

警官:無事なら良かったよ。さぁ早く先に行こうか、お宝はこの廊下の先だよ

直美:ほら佳苗、ヤギチーなんか飲んでないで早く行くわよ。

佳苗:はーい。

警官:ここから先は、より一層注意して進んでくれよ?

直美:なに?とんでもないセキュリティでも待ち構えるって言うの?

警官:いや、それが……この先の金庫に繋がる廊下だけは、
   この僕……コードネーム、クビノカワイチマイでも把握しきれていないんだ。

直美:結局、アンタのコードネームは何なのよ?
   キリキリマイでテンテコマイでクビノカワイチマイって、
   よくそんなんで今まで生きてこれたわね。

佳苗:何があるか分からないって事は、この先はゆっくり進んだ方が良いよね……。

警官:ああ、ゆっくり慎重に進もう……。

直美:そうね……そうしましょ……。

警官:よしっ……行くぞっ……着いてこい……。

直美:ええ……。

佳苗:うん……。

警官:ゆっくり……慎重に……。

直美:周りを……警戒しながら……。

佳苗:音を……立てないように……。

警官:じっくりと……焦らずに……。

直美:一歩一歩……確実に……。

佳苗:静かに……少しづつ……。

警官:必ず何かあるはずだ……気を抜かずに……。

直美:確実に何かあるはずよ……集中して……。

佳苗:絶対、何か起こるよー……神経を研ぎ澄まして……。

警官:金庫室の前に……到着……。

直美:到着……。

佳苗:到着……。

警官:んー……。

直美:ええっと……。

佳苗:何にも……起きなかったね……。

直美:どうなってるのよ! ここの警備は!?
   一番重要な金庫室の前の警備だけザルじゃない!
   最初に「人感センサーと振動感知システム、
   監視カメラを全て担う自動迎撃システム兼警備員」がいて、
   その次が「ビーム的なやつキュインキュイン!ロボット」で!
   「気分悪くなる毒ガス」があって ラストは何にもないって!
   尻すぼみにも程があるでしょ!?
   どこのアホ建築士が建てたのよ!?丸っきり逆に配置した方が絶対良いわよ!
   そりゃ、前もって調べても
   キリキリテンテコクビノカワイチマイマイマイが何にも見つけられないわけよ!
   当然でしょ!? だって何も警備がないんだもの!
   あと、多分だけど二人とも今の私の話聞いてて、
   ここの廊下を慎重に警戒して通ったから無事で済んでるんじゃないかっていう
   疑問があるだろうけど、絶対に何も無いだけだから!
   どうせそうに決まってるんだから!
   と言うことで、
   今から私がそれを証明する為に奇声を上げながら今通ってきた廊下を往復しまーす!
   はいっ、位置についてー!
   よーいドン!いぇぇぇええええいいい!!
   ね?何も無いでしょ!?
   今から折り返してそっち行くよー?フルルルルルルぅぅぅ(巻舌)!
   ねっ!?何も起きなかったでしょ!?
   どういう警備配置してんのよ、ここの宝石店は!

警官:ほら、騒いでないで行くよ?

佳苗:たった一言で処理しないであげてー……。

警官:さてと、この金庫室の扉を開ければどんぐりとご対面というわけか……。

佳苗:確か、番号とダイヤルとマスターキーだったよね。

直美:ここはあんたに任せたわよ、コードネーム、マイマイマイ!

佳苗:ファイトだよ! マイマイマイ!

警官:勝手にコードネーム、マイマイマイにされちゃったよ……。

佳苗:まずは認証番号だね。

警官:ええっと、番号は確か……731っと。

直美:まさかの3桁……もっと気合い入れて守りなさいよ……3桁って自転車守る時の桁数よ?

佳苗:次はダイヤルだね、頑張れマイマイマイ。

警官:ええっと……ダイヤルは……あった、このワイヤーロックか……。

直美:まさかのワイヤーロックっ!? えっ!? ダイヤル式って! 
   まさかのワイヤーロック!?
   金庫にダイヤル式っていったら普通、扉に着いてるやつじゃないの!?
   もう、これ完全に自転車守る為に流通してるアイテムじゃないの!

警官:820っと……。

直美:そして、3桁っ!

警官:よしっ、開いた。

直美:なんなの?この部屋は!ほんとに金庫室で合ってる?
   何!? でっかい駐輪場なの!?

佳苗:ナイス!マイマイマイ!あとはマスターキーだね。

警官:ここの鍵は……この写しで……よし、開いたぞ!

佳苗:やったー!開いたー!

直美:なんだろう……このあっさり感……。マスターキーだとか言ってたけど、
   本当は自転車警備レベルの鍵なんじゃないかっていう疑念が生まれてくる……。

佳苗:うわぁー!見てー!凄い!宝石いっぱいだよー!

直美:本当にとんでもない量ね……。

佳苗:ねぇ、直美!これ全部持っていくの?

直美:ええ、もちろんよ!これ全部頂いちゃいましょ!

警官:ちょっと待った!二人とも!

佳苗:ん?

直美:なっ……なによ……?

警官:勝手に動くんじゃない。ここからは僕の指示に従ってもらう……。

直美:あんた!ここまで来て私達を裏切るつもり!?

警官:あっ……いや……そうじゃなくて……これだけ量が多いなら……
   段取り立ててやった方が効率的かなぁって……
   だから僕が指示出した方が良いと思ったから……。

直美:紛らわしい言い方してんじゃないわよ!
   お宝目前の絶好の裏切りポイントなんだから、
   ちょっとは、言い回しに気使いなさいよ!

警官:ごめん……カッコよく言った方が、話聞いてくれると思って……。

佳苗:マイマイマイが言う、効率的にっていうのは具体的にどうすればいいの?

警官:高価な物から袋に詰めていこう。

佳苗:んー、それはどうして?

警官:宝石を全部持っていこうとすれば逃走のための時間が確保できないだろ?
   だから、限られた量の中でもできるだけ、
   儲けを出すために価値の高い宝石を優先して持っていくんだ!

直美:ちなみに、その価値の高い宝石って言うのは……どうやって見分けたらいいの?

警官:ええっと……。

佳苗:どうしたらいいの? マイマイマイ?

警官:ええっと……ねぇ……。

直美:まさか……あんた……。

警官:よしっ! 手当たり次第に! 持ってくぞっ! 急げぇー!

直美:あんた、ホントなんなのよ!?今のまるっきり無駄な時間じゃ無いのよ!


  間。


警官:よしっ……めぼしい宝石はだいたい袋に詰めたぞ……よし二人とも逃げ……(咳払い)
   ……ずらかるぞ!

直美:こっちもOKよ!早くずらかりましょ!佳苗はどう?ずらかれそう?

佳苗:うん!あともう少しでずらかれる!

直美:早くしなさいよ、あんまり遅いと先にずらかっちゃうわよ!

佳苗:置いてかないでよー、一緒にずらかろうよー!
   ねぇ、マイマイマイは勝手にずらかんないよね?一緒にずらかってくれるよね?

警官:台詞回しで迷ったのをいじるなぁ!
   いいだろ!ずらかるって言っても!
   ずらかるってこういう時しか使わないんだから、使える時に使っておきたいだろ!
   ……って……そんな話いいから早く行くぞ。

直美:ええ、そうね早く行きましょ!

佳苗:よしっ!ずらかろー!

警官:とりあえず元来た道を引き返すぞ。

佳苗:ちょっと待って!

直美:ん?どうしたの?佳苗。

佳苗:ここの廊下、なんか変な匂いがする……もしかしたら毒ガスかも!みんな気をつけて!

直美:ただの気分悪くなるガスよ!さっき通ってきたばっかりでしょ!早く行くわよ!

警官:おいっ!なんだ!?こんな所に血痕があるぞ!?みんな注意して進め!

直美:ただのヤギチーよ!無視して進むわよ!

佳苗:あそこにロボットの気配だよ!警戒して進もっ!

直美:ただの排気口塞がれ、ぶっ壊れロボットよ!気にしないで行くわよ!

警官:確かこの先には……。
   人感センサーと振動感知システム、
   監視カメラを全て担う自動迎撃システム兼警備員がいるけど、気にしないで進むぞ!

直美:ちょっと!待ちなさいっ!
   そこは気にしなさいよ!アイツだけはまだ、何にも解決してないんだから!

佳苗:ねぇ直美……あれ、なんか……あそこの床にうつ伏せに倒れてるのって……。

直美:いやっ!人感センサーと振動感知システム、
   監視カメラを全て担う自動迎撃システム兼警備員、
   過労で倒れてるじゃないのよ!

警官:って、事は……?

直美:気にせず逃げるわよー!

佳苗:逃げろぉ〜!

警官:よしっ、あそこが出口だ!急げぇ!

直美:うぉおおおお!

佳苗:うりぁあああ!

警官:とぉおおおお!

直美:よし、これで……はぁ……はぁ……脱出成功ね……。

佳苗:ふぅ……なんとか無事に出れたね……。

警官:どうやら警察も……来てないみたいだな……。

直美:脱出できたわね……。

佳苗:うん……脱出できたね……もう……何も無いよね?

警官:うん……もう何も無い…… あと……クライアントの元に帰るだけだよな?

直美:そうね、帰るだけね……。

佳苗:……。

警官:……。

直美:……いやっ! だから!
   どうなってるのよここの警備は!?
   帰り道の警備もザルじゃない!
   なんで、なんの障害もなく ストレートで出て来れるのよ!?
   なに!?なんなの!?
   侵入される事に対して対策し過ぎて 脱出される想定じゃなかったの!?
   強化ポイントの振り分けで一箇所にしかポイント割り振られなかった
   超アンバランスキャラクターみたいなステータスの警備してんじゃないわよっ!
   んで、肝心のステータス尖ってる部分を担ってる
   人感センサーと振動感知システム、監視カメラを全て担う自動迎撃システム兼警備員が
   全くもって機能してないのは何事なの!?
   ってか、そいつはいつの間に倒れてたのよ!?
   侵入者の対処だなんて、そう毎日ある業務じゃないんだから!
   今こそ一番の頑張り所でしょ!
   あと、多分だけど二人とも今の話聞いてる最中にもしかしたら、
   私達が気づいていないだけで
   実はもっと価値のあるお宝が隠されててたった今盗んできた宝石は、
   真のお宝を隠すための囮だって思ってたりするんだったら 大間違いだから!
   絶対に何も無いだけだから! どうせそうに決まってるんだから!
   と言うことで 今から私がそれを証明する為に
   正面の入り口から堂々と入って中を隅々まで散策してきまーす!
   お邪魔しまぁあああす!!お宝ぁぁあああ!!どこぉおおおお!?無いねぇえええ!!
   お宝、無いねぇえええ!!やっぱり無いよぉおおおお!!
   …………って、思ったらなんかあったよぉおおお!?
   なんかあったと思ったら、「ジュピターの瞳」だったよぉ〜!
   あの、中盤あたりで話してたやつー! 覚えてるー!?
   あれ、あったよぉー!
   しかも 人感センサーと振動感知システム、
   監視カメラを全て担う自動迎撃システム兼警備員が持ってたよぉー!?
   この人、これだけ仕事あるのにまだ抱え込んでたよー!?
   とりあえず、目当ての物見つけたから戻るねー!
   お邪魔しましたぁぁあああ!
   って、何もないと思ってたら 結局あるんかい!
   一体全体どうなってるのよ!ここの宝石店は!?

警官:よし、帰ろっか……。

佳苗:だから、一言で片付けないで〜。



おわり。