惨劇の後藤


【登場人物】

部長 男 少々厨二気味の一番偉い人。

美紀 女 お姉さん属性。黒髪ロング。

那須 男 クールなイケメン。台詞多。

後藤 男 今回のゲスト。終始泣いてる。台詞少。


坦々と、粛々と。雰囲気を大切に。
アドリブは結構ですが、ムードを乱さない程度にお願いします。
所要時間25分前後です。










《本編》



那須:……と、いうわけで、部室に連れてきたんだ。

部長:そうか……。

美紀:気の毒に……。あなた、名前は?

後藤:後藤、です。

部長:後藤氏、心中お察しする。本当に大変だったな……。
   俺達は現場を見ていないが、ひどかったんだろう。
   事件が起きたのは、午後の授業中だったか。

美紀:ええ、まさか、授業中に、うんこを漏らすなんて……。
   上が制服で下がジャージなのはそのせいだったのね……。後藤さん、元気を出して。

後藤:――……んですよ。

美紀:え?

後藤:……いいんですよ。

美紀:いいって、何が。

後藤:いいんですよ。もう……ぜんぶ、お終いですから……。

部長:後藤氏……。

那須:事件後からずっとこの調子なんだ。見ていられなくてね……連れてきたんだよ。

部長:那須は後藤氏と同じクラスなのか?

那須:ああ。

部長:クラスメイトはどうだった。助けてくれる人間はいなかったのか?

那須:(ためいき)。彼は今、クラスで【カムイ】というあだ名で呼ばれているんだ。

美紀:カムイ? 響きはかっこいいけれど、どういう意味?

那須:カムイ。K・M・Y。……クソ・漏らし・野郎。という意味だよ。

部長:――ッ。むごい……。

美紀:非道すぎるわ。単純にクソ漏らし野郎と呼ぶには呼ぶ側にも抵抗がある。
   その抵抗を無くすために、一見かっこよさげなフレーズでカバーしているのね。
   これでは本当の意味を知らなくても、世間に定着してしまう恐れがあるわ……。

部長:無駄にかっこいい故に、内包するえげつなさをさらに強調しているな。
   ……考えたものだ。

後藤:あ……う……。

那須:ああ、ごめんなカム、後藤くん。傷をえぐるような真似をして。

美紀:大丈夫よ。この部室にあなたの敵はいないわ。

部長:ああ、安心していい、加藤氏。

那須:部長、後藤だよ。

部長:失礼。後藤氏。――しかし、クラスに助けてくれる者はいなかったのか……。
   処理は誰が?

那須:騒ぎを聞きつけた担任が。

部長:そうか……。不躾なことだが、後藤氏の、クラスでの評判は?

那須:さわやかイケメンの、ノーと言えない好青年。頼りがいのある兄貴的な面もある。
   あと、下校途中に捨て猫に餌をあげていたという目撃情報もあるね。

美紀:それが、後藤さんの築き上げてきたイメージ……。

部長:自他共に認める好青年、か。それなのに何故?

那須:うん。実は、うんこを漏らした時、彼は、叫んだんだ。

美紀:叫んだ? なんて?

那須:……後藤君、聞かせてくれるかな。

後藤:あ……うう……。

部長:後藤氏。教えてくれないか。君はなんて叫んだんだ?

後藤:うう……。

美紀:後藤さん、私たちはあなたのちからになりたいの。お願い。

後藤:う……。お、おかあ……さん……。

那須:え? もう一度いいかい?

後藤:お、お母さんって……。

部長:き、君は、君は脱糞しながら、お母さんと叫んだのか?

後藤:はい……。

那須:本当に凄かったよ。まるで、獣の断末魔だった……。

美紀:あんまりだわ。うんこを漏らしながらマザコン宣言までしたっていうの……。
   これじゃ、どんな聖人君子だろうと救いの手は伸びてこない……。

部長:彼が作り上げてきた好青年のイメージ。それが音を立てて崩れ落ちたわけか。
   周囲の人間は、ギャップに耐えきれなかったんだろう。……無理もない。

那須:教室は酷い状況だったよ。思い返すだけでも……(ためいき)

部長:ああ、聞いているだけでも身の毛がよだつな。恐ろしいことだ……。

美紀:私達がその場にいなかったのが悔やまれるわね。
   後藤さん。私達は、例えそこいたとしても、あなたを見捨てたりなんかしなかったわ。

後藤:あ……ありがどうございばす……。

那須:美紀ちゃん、君ならそう言うと思って、持ってきたんだ。
   ……この中に、その時の映像が入ってる。

後藤:え……。

部長:携帯のカメラか。でかした。……美紀。プロジェクターを。

美紀:ええ。――――よいしょっっと。
   ――那須くん、そこにSDを差して。すぐに再生されるわ。

那須:うん、わかった。


一拍


部長:――始まったな。ん? クラス全体が見渡せるが、ただの授業風景じゃないか。

那須:ああ。後藤君がうんこを漏らすのは、もう少しあとだね。

美紀:なぜそんな前からカメラを?

那須:授業が始まる前から、後藤君の様子がおかしかったからね。
   これは何か起こるかもしれないと、
   教室の後ろのロッカーの上に、携帯を乗せておいたんだ。
   少し遠いから、音は拾えてないけどね。

美紀:充分よ。相変わらずの洞察力ね。流石だわ。

那須:ふふ。ありがとう。ほら、見てごらん。
   画面の中央にいる背中が後藤君だ。小刻みに震えているだろ?

部長:そのとなりにいるのは……那須、お前か?

那須:うん。僕は後藤君のとなりの席だからね。
   ――そろそろだ。震えが激しくなってきた。――そして……。

部長:震えが、止まった?

美紀:まるで彼の周りだけ、時間が止まったみたい。

那須:一回止めるよ。……ふたりとも、気付いたみたいだね……。
   そう、実はこの時、となりの席の僕は気付いていたんだ。
   ……彼はもう、漏らしていたんだよ。ひどい臭いがしていたからね。
   ――そうだろ? 後藤君。

後藤:あう……。

那須:答えるんだ。後藤君。

部長:後藤氏、黙っていては分からないぞ。

後藤:ううう……。

美紀:駄目よ。画面から目をそらさないで。ちゃんと見るの。ちゃんと見て、受け止めるの。
   後藤さん。ね? 答えて? 私達は、本当のことが知りたいだけなの。

那須:どうなんだい? 後藤君。

後藤:も、もら……して……ました……。

部長:やはり、か。

美紀:後藤さん。……ありがとう。

後藤:うう……。

那須:続きを始めるよ。
   ――漏らしたといえど、まだとなりの僕しか気付いていないレベルだ。
   そうだね。漏らしレベル第一段階ってところか。
   そして、……このあと彼は、行動を起こす。

部長:これは……、那須に何か言っているのか? 些細な動きだが……。

美紀:周りに気付かれずに、那須くんに何かを伝えようとしているように見えるわ。

那須:一回止めるよ。――そう。藁にもすがる思いだったんだろうね。隣接する席の中、
   唯一の男子である僕に、うんこを漏らしたことを伝えてきたんだ。

部長:馬鹿な。自ら?

美紀:なぜそんなことを……。
   那須くんが気付いているということを、後藤さんはまだ知らないはずよ。

那須:そう。僕は臭いですぐに後藤君が漏らしたことに気付いたけれど、
   本人から直接きくことになるとは思いもしなかったよ。

部長:知ってほしかったのか? 自分がうんこを漏らしたことを。

那須:さあね。

美紀:漏らしたことを二重に知った那須くんの気持ちを、考えなかったのかしら。

那須:そうだね。

部長:――おい、聞いているのか? 後藤氏。

美紀:あなたの話をしているのよ?

後藤:あう……。

部長:俺達がこんなに君のことを思っているのに、君はまるで我関せずじゃないか。

後藤:あ……ごべん……なざい……。

美紀:私達に謝られても困るわ。
   あなたが本当に謝らなければならない人は、ほかにいるでしょう?

那須:美紀ちゃん。……いいんだよ。ありがとう。

美紀:でも、那須くん……。

那須:いいんだよ。僕のことは。僕が我慢すればいいだけのことなんだから。

部長:……まったく。那須。お前はいつもそうだ……。

那須:ふふ。ありがとう、ふたりとも……。――さあ、続きを始めよう。
   ――――後藤君は僕に漏らしたことを伝えたかったようだけど、
   僕は寝たふりをしていたんだ。
   関わりたくなかったからね……。そして……始まるよ。漏らしレベル第二段階。

部長:これは……。

美紀:急に後藤さんの姿勢が良くなったわ。……なぜ?

那須:一回止めるよ。――これは僕の考察だけど。第二段階に入った瞬間、
   パンツでは押さえられない量のうんこが、後藤君のお尻にたくわえられたと思われる。
   そして、不快感から逃れるために、彼がとった行動は、椅子から腰を浮かすことだ。

部長:空気……椅子……。なるほど。椅子との設置面を無くすことにより、
   ズボンと尻の間に空間を作り出し、そこにうんこを一時滞留させたのか。

美紀:そうなの? 後藤さん。

部長:即席戦術とはいえ、こんなことができるものなのか?

那須:後藤君。どうなんだい?

後藤:あ……う……

部長:後藤氏。教えてくれないか? 本当に君はそんなことをやってのけたのか?

後藤:う、うう……はい……ちょっと……浮いてました……。

部長:そうか……那須の考察は正しかった、か。

美紀:流石ね……。

那須:うん……でも、それも付け焼刃。ここからは怒涛の展開だよ。……ふたりとも、いい?

部長:ああ、頼む。

美紀:お願い。

那須:それじゃあ、続きを始めるよ。
   ――漏らしレベル第二段階。それはすぐに終わりを迎えたんだ。
   そして、ついに来たる、漏らしレベル最終段階。
   その忌まわしき兆候に一早く気付いたのは、他の誰でもない。後藤君自身だ。
   極限状態に置かれた彼は、自棄になったのか、狂気に取り付かれたのか……。
   驚くべき行動に出る。――来るよ。よく見ていて。

部長:こ、これは……。こんなことが……。

美紀:すごい……。

那須:聞こえたかい? 机を叩くようにして立ち上がった、彼の咆哮が。
   携帯のマイクにも、はっきりと録音されている。

美紀:ええ……確かに、『お母さん』と……。

部長:後藤氏の言っていたことは、本当だったのか。

那須:もう一度、リプレイするよ。―――どう?

美紀:いけない……私、鳥肌が……。

那須:もう一度、今度はスローで。
   ……特筆すべきは声ばかりじゃないよ。直立した彼のお尻にも注目してほしい。
   ほら。彼の中の恐るべき異形が、一気に開放される瞬間だ……。

部長:驚いたな……。

那須:そして始まる、阿鼻叫喚。

美紀:まるでボウリングのピンのように生徒が遠ざかっていくわね……
   それに、すごい……画面越しでも臭いがしそう。

部長:泣いている女子までいるじゃないか。地獄絵図だな。

那須:映像はここまで。……このあと担任が場を沈め、惨劇は幕を閉じた。

部長:最後までは録画していないのか。

那須:うん。携帯の電池が持たなかったんだ。ごめん。

美紀:いえ、かまわないわ。それに、きっと私は最後まで耐えられなかった……。

那須:嫌なものを見せてしまったね。でも、必要なことなんだ。

部長:ああ、そうだな。この出来事を踏まえ、後藤氏のこれからを考えなければならない。

美紀:ええ、終わってしまったことは仕様の無いこと。考えるべきは、未来ね。

那須:ふたりとも、飲み込みが早くて助かるよ。
   そう。僕たちが考えるべきなのは、後藤君のこれからだ。

部長:これから……か。何か案はあるのか?

那須:もちろん。すでに手は打ってある。

美紀:さすがね。それで、どうするの?

那須:まずは、後藤君がうんこを漏らしてしまった原因の究明だ。
   これは、天野君に頼んである。

部長:天野か。姿が見えないと思ったら、外回りの任務とは、奴らしい。

那須:うん。すでに報告はメールで受け取ってあるよ。

美紀:天野君には何をさせていたの?

那須:実は、彼には聞き込みをお願いしていたんだ。

美紀:聞き込み?

部長:身辺調査か。手が早いな。

那須:天野君のおかげだよ。彼のおかげで大方の原因は分かった。

美紀:天野君、外面だけは最高だものね。きっと有力な情報を引き出せたでしょう。

部長:それで、原因というのは?

那須:ああ、簡単なことだよ。
   後藤君は高等部に入ってからずっと、不摂生な生活に溺れていたんだ。
   深夜の夜更かし、ジャンクフードの多量摂取。
   漏らすのも無理はないほどにね。

部長:生活習慣の乱れ……? それだけでこの惨劇が起きたというのか?

那須:そう。普通の人間ならここまでの事態にはならないだろうね。
   でも彼には、惨劇を引き起こした理由があった……。

美紀:そんな、そんなになるまで、どうして……?
   体が限界だってことに、気付かないはずがないじゃない。

那須:最初に言った通り、彼には、学園での、真面目な好青年というイメージがある。
   深夜の活動の帳尻も、授業中に寝るなんてことでは合わせられないんだ。
   二足のわらじに苦しんだ彼の肉体は、徐々に蝕まれ、そして崩壊した。

部長:家族は何をしていたんだ。止めることは出来なかったのか。

那須:それについては、さっき届いた天野君からのメールに、
   後藤君の母親からの聞き込み情報があるね。

後藤:えっ……。

美紀:興味深いわ。聞かせて。

那須:――彼の母親は、ある日の深夜、毎晩明かりの点いている後藤君の部屋を不審に思い、   彼の部屋を覗いたそうだ。
   そこにはアニメのオープニングに合わせて嬉々として踊っている後藤君の姿があった。
   母親はそれ以来、深夜の活動については触れないようにしているそうだよ。

後藤:う、うう……ふぅっふう……。

部長:どうした後藤氏、震えているぞ。

美紀:我が子への愛ゆえに、放っておくことしかできなかったのね……。
   でもその結果、息子がこんな惨劇を引き起こしたなんて知って、お母様も気の毒だわ。

那須:そうだね。母親も、涙ながらに語ってくれたそうだよ。

部長:痛々しいな。母上のためにも、後藤氏を救ってやらねば。
   那須、原因はだいたいわかった。それで、打開策はあるのか。

那須:うん、もちろん考えてあるよ。
   後藤君が漏らした原因は生活習慣の乱れによる身体機能の失調だ。
   彼の体は本来の機能を失いつつある。
   だから、以前の状態に戻すためには、訓練によって失われた
   機能を呼び覚ましてあげればいいと考えたんだ。

美紀:訓練?

部長:ほう、具体的には?

那須:トイレトレーニングだよ。祥子ちゃんに頼んで、道具は揃ってるんだ。

部長:祥子もいないと思ったら、買い出しに行っていたのか。

那須:事情を話したらすぐに買ってきてくれたよ。
   用事があるみたいで、物だけ置いて帰ってしまったけどね。

部長:それで、その道具というのは?

那須:ちょっと待ってて、―――よっ、と。ほら、これ。

美紀:それは?

那須:おまるさ。

部長:おまるか。なるほど。これならどこでもトイレトレーニングが出来る。
   そこが部屋だろうと、学校の教室だろうと。

美紀:つまり、ここでも……。考えたわね。

那須:さあ、後藤君。――おまるに用を足すんだ。

後藤:うえ? え……うぅ……。

部長:後藤氏、どうした? おびえているのか?

美紀:大丈夫よ。ちゃんとできるかどうか、見ててあげるから、安心して。

那須:後藤君、早くまたがるんだ。

後藤:で、でも……。

美紀:後藤さん? 私達はあなたのためにここまでしているのよ。
   このおまるだって、祥子ちゃんが買ってきてくれたの。
   わかるでしょう。わがままを押し付けないで。

部長:後藤氏、怖がることはない。ここは、あの時の教室じゃないんだ。

那須:君には必要なことなんだよ。さあ。

後藤:う、うぅ…………はい……わかりました……。

那須:よし、それじゃあズボンを脱いで座ってみて。

後藤:……はい……。

部長:おや? 後藤氏、それはなんだ。ケツにおかしなブツブツがあるぞ。

美紀:生活習慣の影響がおしりにまで及んでいるのね。
   あまり見ないほうがいいわ。きっとよくないものよ。

那須:それじゃあ、ふんばってみて。

後藤:あ、う……はい…………ふっ…ん……ハァ。

部長:もっとだ。

後藤:はい……ふっっ……ん……ハァ。

美紀:もっとよ。

後藤:はい……ふぅぅっ……んん……。んん……――あっ。……あぁ。

部長:後藤氏、なぜ小便を出している。

美紀:あなたがトレーニングすべきは大の方でしょう? 何をしているの?

後藤:あ、あぅぅ……。ごべ、んなざい……。

美紀:いいから、早く止めなさい。

後藤:あ、あ、で、でも……。

美紀:それじゃあ意味がないわ。

那須:美紀ちゃん、あまり責めるものじゃないよ。仕方ないんだ。
   後藤君は教室で、あれだけのうんこをすでに漏らしているのだから。

部長:それにしても。後藤氏、本当にそれだけなのか?

後藤:……ぅ……はい。

部長:そうか。まあいい。小便は止まったようだな、ズボンをあげろ後藤氏。

後藤:……はい。

那須:今はこんなところ……かな。これから徐々にトレーニングを重ねていこう。

部長:そうだな。焦ることはない。一歩ずつ前へ進んでいくんだ。

那須:それじゃあ、もうひとつ。
   ――はい、これ。しばらくはこれを使ってみようか。後藤君。

後藤:こ……これ、は……?

那須:オムツだよ。成人用の。

部長:なるほど。それを装着していればいつどこで漏らそうと外部に漏れることはない。
   つまり、惨劇を回避できる。

美紀:そうね。確かに、うんこを漏らす人間には、オムツが必要だわ。

那須:さあ、後藤君、受け取ってくれ。これは僕達からのプレゼントだ。

部長:ああ、遠慮はいらない。明日からはそれを付けて、学園生活を謳歌するがいい。

美紀:しばらくはここでのトレーニングも続くでしょうけど、安心して。私達も応援するわ。

後藤:あ、ありがどうございばす……。

部長:さあ、今日はもう帰るんだ。母上との話もあるだろう。

美紀:おまるは私たちが掃除しておくわ。あなた一人だけで問題を背負うことはないの。
   私たちが付いてる。

後藤:……はい。
 
那須:ああ、それと、知り合いの病院を天野君づてに母親に紹介しておいたよ。
   信頼できるお医者さんだ。相談してみるといい。

部長:那須、いろいろ気が利くな。今回の件はお前に頼りっきりだ。

那須:なに、クラスメイトを放っておけないだけだよ。
   後藤君、お大事に。

部長:俺達がいるということを、忘れるなよ。

美紀:さようなら、後藤さん、また明日。
   元気、出してね?

後藤:あ……、はい……さようなら……ありがどう、ございばした。











部長:昨日の後藤氏の件だが。那須、経過は?

那須:ああ、天野君からの情報によると、
   後藤君は今日、学校を休んで、病院に行っているそうだよ。

美紀:そうね。やっぱり、プロに診てもらうのが一番だものね。

那須:少しの間入院すると、お母さんは言っているらしい。
   それと、息子にいろいろ助力してくれてありがとうって。お菓子ももらったみたいだ。
   あとで天野君が持ってくるってさ。

部長:俺達は当然のことをしたまでなんだがな。

美紀:ええ、お礼だなんて。後藤さんのためにやったことだもの。

那須:後藤君、早くよくなるといいね。

部長:ああ、そうだな。
   その頃には、惨劇のほとぼりも冷めているだろう。
   そうでなくても、せめて俺達ぐらいは温かく迎えてやろうじゃないか。
   クソ漏らしでも、カムイでも構わない。
   ――後藤氏は、後藤氏なのだから。










fin